その後の箱根
千乃介は狭霧との電話を切ると振り返って言った。
「兄貴、三太やっぱり気が付いてないみたいだぜ。俺たちの電話の理由」
「ああ、そんな感じだったな」
二人の会話を隼人が聞きつけた。
「そうはいっても自分の誕生日くらい覚えているだろう?」
千乃介は考えが甘いなといった調子で、
「自分が一コ年取ったことは分かってても、あいつの場合、それと俺たちの電話が結びつかないんだよ」
「そりゃまた何でだ?」
今度は多岐川が聞いた。
「そんなの俺は知らないよ。けど、あいつはそーゆーヤツなんだよ。箱根にいたときのことを思い出してみろよ」
他の三人はそれぞれその頃の狭霧を思い浮かべる顔つきをした。やがて口を揃えて言った。
「納得・・・」
「だろ?」
「・・・でも、まあ・・・」
一乃介がクックッと笑い出した。
「三太らしいな」
一乃介の言葉に隼人と多岐川は顔を見合せた。
「・・・確かに」
「そうだな」
そして二人も笑い出した
その三人を千乃介は呆れたように見た。
和やかな笑い声がアパートの部屋の外まで響いた。
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