グレ&アンがナンパしたら その3
翌日。クレーマー家にやってきたロナルドが言った。
「よっ、昨日二人でナンパしに行ったって?」
「・・・くだんねェことにホント耳が早ェなあ」
「ロナルド、誰から聞いたの?」
偶々居間に一緒にいたグレアムとアンジーが同時に答えた。
「壁に耳ありってね。それで首尾はいかかでした?」
「ホント、ヒマだねェ」
「お前さんにゃ聞いていないよ、アンジー。オレはグレアムに聞いているんだ」
「ボク?」
ロナルドにそう言われてグレアムは困ったような顔をした。
「そんなんじゃないよ・・・それにいきなり集団で囲まれて何が何だか分からなかったよ」
グレアムの答えに、ロナルドは口笛を吹いた。
「集団で!そいつは羨ましい。その中に可愛い子はいなかったのかい?」
「顔の区別なんかつかなかったよ。第一、皆アンジーのガールフレンドだし」
「おやまあ」
ロナルドは笑い出すとアンジーを見て言った。
「それじゃ、アンジーお前さんのガールフレンドを皆グレアムに取られちまったのかい?」
「ボクはそんなつもりじゃ・・・」
思いがけないことを言われてグレアムが慌てて否定しようとすると、アンジーが遮って言った。
「何とでも。移り気をしたからっていちいち目くじら立てるとか、そんなンじゃ最初(ハナ)からねェよ。第一、付き合うのに誰かに遠慮しながらなんざ御免だね。面倒くせェったらありゃしねェ」
「アンジー、そんな・・・」
アンジーの言葉に、グレアムは眉を顰め、ロナルドは大きく笑い出した。
「そりゃあ、アンジー、お前の場合、本命が人一倍面倒くさいときてるから、息抜きくらい気楽にやりたいよなあ」
ロナルドの言葉をグレアムが聞きとがめた。
「え?本命って?」
「ああ、それはだな・・・」
ロナルドが答えようとした途端、
「ロナルド!てめェ余計なことをぬかすんじゃねェ!」
もの凄い剣幕でアンジーは怒鳴った。そのアンジーの反応に、ロナルドはますます愉快そうに笑いながら去って行った。
「・・・ロナルドはどうしたの?」
「知るか!」
事の成り行きが理解できずに聞いたグレアムに、アンジーはつっけんどんに返事をした。
――ロナルドの野郎、見透かすようなことを言いやがって・・・
当たらずとも遠からず。
ロナルドの言葉が的を射ているぶん、余計にしゃくに障るアンジーだった。
0コメント