各方面の反応~貴子姫の場合(「始まりの日」番外#2)
「剣望くん、卒業したら甲賀に戻られるのですってね。寂しくなるわ」
「ああ。あんたにも世話になったな」
「戻る前に甲賀のお家の住所をお聞きしても良いかしら」
「いいけど。住所くらい小鉄に聞いてくれても・・・」
「あら、駄目よ。各雲斎くんには聞けないわ」
「?何で?」
「だって、各雲斎くんには秘密の報告書を送るためですもの」
「秘密の報告書?何の?」
「当然、大学での彼の監視結果についてよ」
「か、監視?」
「勿論、真面目な彼を疑っている訳ではないわ。でも、高校と違って大学では誘惑も増えるでしょうし、第一あの雪也さんがそんな機会を逃す筈がないわ。各雲斎くんにその気がなくても雪也さんについてそんな場所へ行ったら、周りの女の子たちが彼をほうっては置かないわ。あんな野暮ったい眼鏡一つくらいで目敏い女の子たちの眼をごまかせるものではなくってよ」
「は、はあ・・・」
一気に言われた言葉の内容を把握しきれず気を呑まれている狭霧を、貴子姫はふっと微笑んで優しく見つめた。
「大丈夫、私は剣望くんの味方よ。遠く甲賀の地に離れてしまっても、各雲斎くんの様子は逐一お知らせするから安心なさって」
「み、味方って・・・」
瞳をキラキラさせながら、どこか嬉しげな様子で言う貴子姫に、狭霧はげっそりとした気分になった。
― そりゃ松平にバレてないとは思ってなかったけどね・・・
「剣望くん?どうかなさって?」
「い、いや・・・」
いっそのこと合コンでも何でも行ってくれればいいのに・・・ついそんな考えが頭をよぎる狭霧だった。
2コメント
2017.03.07 11:06
2017.03.06 13:44