The little birds in the green woods #1 (「はみだしっ子」です)
――すべては、その言葉から始まったのだったか
道に寝転がった二人の子供。それが始まりの風景。
訝しげな視線で幾人もの人々が通り過ぎたあと、一人の黒い髪の少年が通りかかり、初めて彼らの傍らで足を止め、片方の子供と二言三言短い言葉を交わした。
やがて、黒髪の少年が差し出した手につかまって二人は起き上がり、それから三人一緒に並んで、どこかへと立ち去った。
三人にもう一人仲間が加わって、四人になるのはもう少し先のこと。
そして、“奴ら”の時間は回り始めた・・・
新しい街に着いてまもなく、風邪をひいたマックスのため、四人は古いアパートの一室を借りた。
マックスの病気が全快したあとも、グレアムの主張により、そのままそのアパートにしばらく腰を落ち着けることになった。マックスの風邪は放浪生活の無理と疲労が溜まったためだというのがグレアムの見解だった。
ボロアパートの管理人は少々耄碌したばあさんで、子供四人の下宿人の身元をそう深く追求することもなく部屋を貸してくれたのだったが、あるいはそれは、彼女が、母親が病気で入院しており兄弟四人だけで暮らしているというアンジーの嘘八百を本気にしたせいかもしれなかった。これだけ容姿の特徴が異なる四人の全員が兄弟というのは、いくらなんでも無理がありすぎるとグレアムなどは思ったが、その懸念に対するアンジーの答えは四人全員父親が違うことにしたという呆れたものだった。さらに呆れたことに、管理人の老婦人から、その件についてアンジーは大いに同情を買ったらしかった。
「それで、ボクとアンジーはいくつ違いということになったの?」
というグレアムの問いかけに、
「お前が一個上だよ。本当言うとオレが年上ってことにしたかったんだけどな。たった三ヶ月でも事実は事実だし、仕方ねえだろ」
と、どこか悔しげにアンジーは答えた。たとえ嘘でも、グレアムと今以上の年齢差がつくのはアンジーにはしゃくに障るらしかった。
いずれにせよ、当面のねぐらの心配がなくなったことで、それを幸いにグレアムとアンジーは、それぞれアルバイトを始めることにしたのだった。
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