ペニー・レインの最後の2ページ


竜(ドラゴン)よ

天馬(ペガサス)よ

一角獣(ユニコーン)よ

牧神(フォーン)よ

イカロスよ

目ざめよ 目ざめよ もろもろの神話 

――時の夢よ――


「ユニコーン」を繰り返し読んだあと、旧作「ペニー・レイン」の最後の2ページが自然と思い出されました。

2年前、「春の夢」でポーが再開したときは、旧作にはなかったエドガーや一族の新しい設定は、新作故の変化や追加設定だと思っていました。

「ユニコーン」を読んだ今となっては、「春の夢」の話の時点で既に「ユニコーン」の構想があり、その展開のための伏線が周到に張られていたと分かります。

でも、それ以上に震えがきたのは、旧作「ペニー・レイン」のラスト2ページとの符合の仕方です。

予告で新作のタイトルを知って、何故「ユニコーン」なのか気になっていました。

一角獣(ユニコーン)は、旧作「はるかなる国の花や小鳥」でエルゼリがエドガーをそう呼び、「ユニコーン」のエドガーのセリフの中にもそう示唆するようなセリフがあることから、エドガーのことを指すのは確実だと思います。

「ペニー・レイン」で「目ざめよ 目ざめよ」と呼びかける幾つもの神話の生き物たちの一つに列挙されているユニコーン。それが、長い眠りから目ざめたエドガーの話のタイトルとして選ばれたのは必然だったのだと、改めて驚嘆させられます。

そもそも考えてみれば、記事の冒頭の詩を含む、直接ストーリーとは関係しないあの2ページが「ペニー・レイン」という話の最後に何故あるのかとても不思議な気がします。

言うまでもなく、「ペニー・レイン」はエドガーによってポーの一族に加わった “アランが目ざめる” までの話です。

火事の中でアランが消滅したと思われ、「エディス」で一旦閉じた話が、再び始動するときに(「春の夢」は、「ユニコーン」を始めるために、旧作では足りない説明をするために差し挟む必要があった話だったんだろうと思います)、「一角獣(ユニコーン)」という言葉で、この「ペニー・レイン」にリンクしている・・・

これは、40年以上前から用意されていたことなのか?

思わずそう考えたくなってしまいたくなる。

普通なら怖いくらいの、信じられないほどの奇跡。

でも、「ポーの一族」という物語なら、そして萩尾望都という天才なら、現実をも巻き込んだ、こんな奇跡を起こしても少しも不思議でないという気もするのです。





13th hour garden

表のブログ“Nowhere Garden”には載せない記事のために新たに開設した裏のブログです。 サイト名はPhilippa Pearceの“Tom's Midnight garden”にちなんだもの。真夜中の13時に時を打つgrandfather clockからつけました。 表も裏もどちらのサイト名も、存在しない庭という意味では同じになります。

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