必殺編の感想

ごめんなさい・・・この週末に書こうと思ったのですが、結局書けませんでした。

(もし、万一待っていてくださる方がいればですがw)

実は、4月から延々と準備していた仕事のヤマが今月~来月にきてまして。最近はそのストレスがついにピークに! 気分転換とブログ更新のために「必殺編」の感想を書こうと思ってたんですけど、やっぱ仕事が完全に頭から離れないので断念しました。

「必殺編」自体は今日再読し終わって、やっぱすごく好きな話で色々書きたいことはあるので、仕事が一段落したらまた感想を書きたいなと思います。

「必殺編」読むと、剣望くん関係ですっごく読みたくなるのが、小鉄との子供時代の話と、中村・勝取に出会って仕置人の仲間になる経緯の話。

てな訳で、感想の代わりに書きかけでストップしている話から、ワンシーンだけ完成している二人の子供時代の話をUPする気になりました。

全くの書きかけで完成してない話で、いつ完成するかも分からないので、続きを待つのが嫌な方には読むことはお勧めしませんがw

あと、上記の仕事上の理由のため、しばらくブログ更新はお休みします。いつまで・・・とは言えないのですが、まあ、最悪でも、来月発売のPGの感想ブログくらいでは復活する予定です。

ああ、それにしても、早く、この話の続きが書ける状態になりたい・・・

では、しばらくさようなら。


「子供時代(仮)」


「狭霧!」

鬱蒼と生い茂った木々の間に、澄んだ声が響いた。獣道以外、道らしき道もない深い山の中、重なりあった幹と幹の間の一つから、一人の子供が姿を現した。

袖なしの丈の短い着物から伸びた長い腕や脚は如何にも健やかそうで、肘から下に手甲、膝から下は晒し布を巻いた格好だった。一見したところ、少女のようにも見える顔だちで、濡れたような切れ長の黒い瞳と、肩のあたりまでの長さの艶やかな黒髪が印象的だった。まだ5歳だが、聡明そうな表情と発育の良い体つきのため、もう少し上の年齢にも見えた。

その子供― 小鉄は、左右を見ながら器用に木々の間を通り抜けて探している相手の名前を呼んだ。幾度か呼んでも応えがなく、探す方向を間違えたのだろうかと小鉄が思い始めたところ、一羽の小鳥が耳の横を掠めて前方へ飛び去っていった。自然にその姿を追った視線の先に小さな草地があり、山間にあって僅かに視界が開けた場所になっていた。その草地の真ん中に立っている楠の木に向かってその鳥は羽ばたいていった。

― あそこか。

楠の枝の地面に近いほう、葉の生い茂った一角に、何羽もの鳥が群れ集まっていた。先ほどの鳥も仲間たちに呼ばれたのに違いなかった。

小鉄は草地に足を踏み入れ、楠の木の根元までやってくると上を見上げた。太い枝の一つから、子供の小さな両足がぶら下がっているのが見えた。

小鉄は取りつく枝に狙いを定めると、一瞬の跳躍の後、枝を掴んでくるりと一回転した。そして忽ちのうちに、木の上の子供の隣に腰かけていた。

「狭霧。探したぞ」

小鉄の探していた相手― 狭霧は、先ほど見た鳥たちに囲まれるようにして木の上にいた。狭霧はそのうちの一羽を腕に止まらせていたが、小鉄の顔を見ると、鳥に何事かを囁いた。その鳥が狭霧の腕から飛び立っていくと、それを合図にしたかのように、他の鳥たちも一斉に飛び去った。

「・・・探してたって?」

遠ざかっていく鳥たちを見送りながら、狭霧は言った。そう言う狭霧の頬に小さな擦り傷ができているのに小鉄は気が付いた。よく見ると、か細い手足のあちこちに小さな傷があるのが分かった。

狭霧も小鉄も、甲賀の忍びの血を引く家系に生まれた。物心ついたころには忍びとしての修行が始まり、成長するとともに、その厳しさは増していった。そして、その修行は狭霧にとってより過酷なものとなっていた。

無理もない、と小鉄は思った。狭霧は小鉄より2か月ほど後に生まれただけで小鉄と同い年だが、見た目はずっと下に見えた。背も小鉄より頭一つ分ほど低かった。同じ子供である小鉄の眼から見てさえ、忍びの修行の厳しさに耐えるには、痛々しいほどの幼さだった。

最近では、二人の教育係である長老からの叱責も狭霧のほうに集中することが多くなっていた。先ほどまでの鍛錬の時間にも、やはり、狭霧は長老からこっぴどく叱られていた。

そして、鍛錬の後のわずかな自由時間に、姿が見えなくなった狭霧を探して小鉄はここまで来たのだった。

見た目は幼い狭霧だが、中身までそうという訳ではない。身体が小さい分、忍びの修行の主要な部分である肉体的な鍛錬にはどうしてもハンディがある狭霧だったが、忍びとして必要な知識や教養を養うために長老が行う講義では、小鉄に後れを取ることは全くなかった。むしろ、知識の吸収の速さや講義の意味内容を把握する能力の高さに、小鉄は度々感嘆を覚えた。

そんな狭霧だけに、周囲の期待を幼いながら敏感に感じ取っていたのかもしれない。小鉄と同じ甲賀の忍びの血を引いていても、狭霧のそれは特別なものだった。「長」という言葉をいつから耳にしただろう。小鉄と狭霧が暮らす甲賀の隠れ里にあって、その「長」という言葉で呼ばれる人物の存在は絶対的なものだった。そして、その「長」である人物は、紛れもなく狭霧の父親であり、狭霧自身も、将来その「長」になることが生まれた時から運命づけられていた。

以前なら、どんな時も小鉄の側を離れることはなかった狭霧だが、最近では、急に一人でどこかへ姿を消すことが多くなっていた。狭霧から屈託のない笑顔が減り、幼い顔に似合わない沈んだ表情がしばしば浮かぶようになったことに、小鉄は密かに心を痛めていた。

このときの狭霧の顔に浮かんでいたのもそのような憂いを含んだ表情だった。

自分のほうに顔を向けようとしない狭霧を伺うように見ながら、小鉄は懐から包みを取り出して言った。

「母上がおやつをこしらえたんだ。狭霧の分だって」

その言葉を聞いた途端、狭霧は小鉄のほうを振り向いた。鍛錬のあとでお腹が空いていたのだろう、差し出されたおやつの鬼饅頭を見て目を輝かせた。早速、鬼饅頭を手にとって頬張った。

美味しそうに食べる様子を見守りながら、狭霧に笑顔が戻ったことに小鉄はほっとした。

あっという間に鬼饅頭を平らげて満足そうな表情を浮かべた狭霧に、小鉄は言った。

「狭霧。今から一緒に来ないか。いいもの見せてやるよ」

「いいものって?」

小鉄の言葉をおうむ返しにして狭霧が聞いた。あどけないその表情から、憂いの影はすっかり消えていた。

「いいから。ついてこいよ」

小鉄はそう言うと、木の枝から飛び降りた。地面に鮮やかに着地すると、そのまま走り出した。

「待ってよ、小鉄」

慌てて狭霧も枝から飛び降りると、小鉄の後を追った。


(続く。)





13th hour garden

表のブログ“Nowhere Garden”には載せない記事のために新たに開設した裏のブログです。 サイト名はPhilippa Pearceの“Tom's Midnight garden”にちなんだもの。真夜中の13時に時を打つgrandfather clockからつけました。 表も裏もどちらのサイト名も、存在しない庭という意味では同じになります。

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