The off-crop season #3
列車を乗り継ぎ、駅から12キロの道のりをほとんど駆けるようにして、アンジーはオフィーリアの家に戻った。森の中の一軒家は、月の明るい夜のなかにあった。
息せき切ってアンジーが戻ってきたのを見て、家主であるフー姉様ことオフィーリアも、グレアムがやっかいになるようになってから彼女の家にしょっちゅう入り浸っているエイダも、あっけにとられた様子だった。二人とも居間で、エイダは紅茶のポットを、オフィーリアはケーキの皿とフォークをそれぞれ手にしていた。グレアムの姿はなかった。
「・・・おやま、アンジー、お早いお帰りで」
「どうしたの?今日は向こうのお家に泊まってくるのではなかったの?」
エイダの質問には答えず、「グレアムは?」とアンジーは二人に聞いた。
「グレアムなら、夕方に微熱が出たんで、もう休んでいるわよ。・・・どうしたの?何かあったの?」
オフィーリアの言葉を聞くと、しかし、アンジーは何も言わずにそのまま居間を出て行った。グレアムの部屋へ行くつもりらしい。
「アンジー、どうしたのかしら?」
エイダが不思議そうに言い、オフィーリアは口に入れたままのケーキの咀嚼を再開しつつ答えた。
「さあ?たかが微熱で、虫の知らせがあったわけでもあるまいにね」
いずれにせよ、心配することではなさそうだ。そう判断すると、彼女たちはそれぞれが手にしたものに意識を戻したのだった。
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