The little birds in the green woods #10 (「はみだしっ子」です)
その日の夕方バイト先からアンジーがアパートへ戻ったとき、部屋にはサーニンとマックスしかいなかった。二人はアンジーを見るとドアのほうへ駆け寄ってきて「お帰りなさい」と一緒に口を揃えた。
「おう、帰ったぞ・・・グレアムはまだ戻ってきてないのか?」
今日は例の教会で夜に催しがありピアノの練習ができないため、グレアムもバイトが終わったら真っ直ぐ帰る予定のはずだった。
まだ戻ってきていないという返事を二人から聞きながらアンジーはキッチンを覗いた。サーニンたちが洗ったらしく食器類はあらかた片付いていたが、テーブルの上には食事の載った皿がまだ残っていた。
「あれ?なんでメシがこんなに残ってんだ?」
皿の上に掛けられた被いを取って残った食事の量を確認したアンジーが聞くと、サーニンとマックスは互いの顔を見合わせた。先に答えたのはマックスだった。
「あのねえ、グレアムが一杯残したの」
「グレアムが?」
「うん、グレアム、食欲がないって言ってたの。アンジーに、せっかく作ってくれたのに食事残してごめんねって」
「食欲がないって?」
アンジーがサーニンのほうを確認するように見ると、サーニンはちょっと気掛かりだという表情をしてマックスの言葉を補足した。
「オレ、具合悪いんだったらバイト休んだらって言ったんだけど・・・グレアムが大丈夫だからって言って止められなかったんだ」
サーニンの言葉を聞くと、アンジーは踵を返して入ってきたドアへと引き返した。
「アンジー、どこ行くの?」
心配気にマックスが問う。アンジーはドアの前で一旦立ち止まると振り返って言った。
「グレアムのバイト先へ行ってくる。お前らはいいから部屋にいろ」
そしてアンジーはドアを開けて部屋を出て行った。
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