The little birds in the green woods #11 (「はみだしっ子」です)
アパートを出ると既に外は夕闇が濃かった。グレアムのバイト先へ向かって急ぎながら、アンジーはここ何日かのグレアムの様子を思い浮かべた。
互いにバイトで忙しく最近はそれほどゆっくり相手を観察する時間はなかったが、それでも今思えばグレアムの様子は少しおかしかった気がする。
そうでなくてもバイトの他にピアノの練習や夜遅くまで起きての読書と、目一杯自分を酷使しているグレアムだった。アンジー自身少しは手を抜けと何度かグレアムに忠告を試みていたのだったが、その度アンジーの言葉に素直に肯いたグレアムはしかし結局何一つ変えようとはしなかった。
恐らくグレアムには自分が無理をしているという自覚さえなかったのだろう。バイトは勿論、ピアノも本もグレアムにとっては自分が望んでやっていることだった。実際ピアノや読書に夢中になって時間を忘れて没頭してしまうことも何度かあったらしい。ただ、他のものにどんなに夢中になっていても、グレアムは四人のキャプテンとしての役目を忘れることは決してなかった。昼間サーニンやマックスが二人だけで残されて寂しい思いをしている分、夜や昼間の空いた時間は必ず二人の相手をした。もっともサーニンは寂しさを表に出してグレアムに甘えようとはそれほどしなかったから、グレアムが相手するのはもっぱらマックスのほうだったが。だが、その分しわ寄せはグレアム自身に行っていたのかもしれなかった。
やがて、前方の左手にグレアムのバイト先の店が見えた。入り口のドアに向かうために店の前を横切るときガラス窓越しに店内の様子が見えた。すでに閉店間際らしく客の姿はなく、グレアムが一人で片付けをしている姿がすぐ近くに見えた。
ほっとしてアンジーがグレアムに声を掛けようとしたときだった。蒼白の顔色をしたグレアムの様子にアンジーが何かがおかしいと気付く間もなかった。アンジーが思わず差し出した手はガラス窓に遮られて届くことはなく、グレアムは床に崩れ落ちた。
0コメント