忘れられないセリフは「ビザあるの」


原作「ポーの一族」の魅力を挙げるとなると忘れてはいけないのが物語を彩る数々の名セリフ。宝塚版の脚本でも原作のセリフが沢山採用され、劇中で歌われる歌詞も原作の詩やセリフが元になったものが数多くありました。


「アラン!私たちと一緒に遠くへ行く?時を超えて遠くへ行く?」


「何故生きているのかって・・・それが分かれば!創るものも生み出すものもなく、移る次の世代に託す遺産もなく、長い時をなぜこうして生きているのか」


「知ってる?君は人が生まれる前にどこから来るか」

「知らない・・・」

「僕も知らない。だからメリーベルがどこへ行ったか分からない」


「君もおいでよ。一人では寂しすぎる・・・」


舞台で実際にエドガーやアラン、メリーベルによって喋られたこれらのセリフは紛うことなき名セリフ・名シーンで原作の絵共々脳裏に焼き付いております・・・

が、実は私が「ポーの一族」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは記事タイトルのセリフ

「ビザあるの」・・・いや、マジに(笑)

これは「小鳥の巣」のラスト近くでガブリエル・スイスギムナジウムの生徒の一人(セリフだけなので誰かは分からない)が学校を去って行くことになったE&Aに問いかけたセリフなんですが、名前もないキャラが発した何の変哲もない一言が上記の名セリフに劣らない鮮やかさで印象に残る。一つのセリフだけが際立つというのではなく、セリフの連なりにリズムがあって、そこに一つのメロディに別のメロディが重なるように吹き出しの外に置かれた言葉が重なってくる。そして、それらの言葉がコマ割や描かれた絵と一体になって、音楽を覚えるようにいつの間にかシーンやセリフを覚えてしまっている。

舞台ではカットされてしまっていたのですが、「ポーの一族」のセリフの中で大好きな一つがシーラ夫人がジェインにファッション指南をするときのセリフです。

「あら!みっともない若い娘なんていやしません。髪よ、まず髪を結って。最新流行のバッスルスタイル。勿論ウェストは細く胸を出して・・・!娘らしく・・・!色は・・・ええ勿論青よ!青のタフタ。帽子は青よ。・・・ああ!ぴったりのを持っていますわ。白い羽飾りの・・・!」

セリフ全体がリズミカルで、所々に散りばめられた「バッスルスタイル」「青のタフタ」という当時のファッションの用語や布地の名前がとても魅惑的に響きました。

「ビザ」もそうですけど、自分が「ポーの一族」を最初に読んだのは高校1年の冬で、ポーで覚えた言葉は結構あります。「シラノ・ド・ベルジュラック」と言う戯曲のタイトルも「小鳥の巣」で覚えました。(「シラノ・ド・ベルジュラックをやったほうが良かったんでねえの」ってやつですね)

・・・と書いて思い出したことが。そういえば、昔、宝塚で「剣と恋と虹と」というタイトルで「シラノ・ド・ベルジュラック」をやったなあ。星組で、当時のトップ娘役白城あやかちゃんのロクサーヌがとっても素敵な舞台でした。






13th hour garden

表のブログ“Nowhere Garden”には載せない記事のために新たに開設した裏のブログです。 サイト名はPhilippa Pearceの“Tom's Midnight garden”にちなんだもの。真夜中の13時に時を打つgrandfather clockからつけました。 表も裏もどちらのサイト名も、存在しない庭という意味では同じになります。

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